――金曜20時
里中は祐樹がバイトをしているショットバーに来ていた。
「ほらよ」
祐樹は里中の前にカクテルグラスを置いた。
「やっぱり男なら最初に飲むカクテルはこれだろう?」
バーテン姿の祐樹は得意げに里中に言う。ワインを思わせるような赤い色のカクテルにはチェリーが沈められている。
「これは……マンハッタンか?」
里中はカクテルグラスを傾けた。
「まあな、これは俺の奢りだ。でも2杯目からは料金取るからな?」
「分かってるよ」
里中は苦笑するとグラスを口に運んだ。甘みのある香りが鼻腔を擽る。
「旨いな……それで、俺に話って何だ?」
「お前……さ、彼女とは会ってるのか?」
祐樹の顔は真剣だった。
「彼女? 彼女って誰だ?」
「青山千尋だよ」
「千尋さんか? 別に会うって言っても週に一度、病院に生け込みに来る日だけだぜ? 最後に会ったのも1週間前だ。って言うか、何でお前が千尋さんを知ってるんだよ」
「何か彼女から聞いてるか?」
しかし祐樹はそれには答えず質問をする。
「いや……。聞くって何を? って言うか、先に質問してるのはこの俺なんだけど?」
「そっか。何も聞いていないのか」
祐樹は呟いた。
「おい! 無視かよ!」
すると祐樹は黙って里中にスマホを見せた。それは渚の写真だった。
「この男のこと、知ってるか?」
「……?」
里中は穴が空くほど真剣に写真を見つめ……首を捻った。
「いや、知らない男だ。この男がどうかしたのか?」
祐樹は一瞬驚いたような表情を見せた。
「そうか……《《知らない男》》か……」
「お前が何言ってるかさっぱり分からないんだけど?」
「それなら逆にこっちから尋ねるぞ。どうして俺とお前は知り合いなんだ?」
祐樹は真剣な眼差しで里中を見る。
「ど、どうしてって……。それはお前、二人の共通の知り合いを通じて……? あれ? 共通の知り合いって一体誰だ?」
里中は頭を抱え込んでしまった。確かに自分はその人物を知っていたはずだ。なのに何故何も思い出せないのか分からない。
「やっぱり、お前もそうだったんだな」
祐樹は核心を突いた言い方をする。
「そうだった? どういう意味だ?」
「お前がもう1杯カクテル頼んだら教えてやってもいいぜ?」
祐樹は意味深に笑った――
****
「で、お前の幼馴染の身体を使って千尋さんや俺達と会っていた人物がいたって訳だ? だけど肝